2012年2月19日日曜日

江戸・東京経済新聞 日曜書評

絶望の国の幸福な若者たち”(古市憲寿著:講談社)

本書は、所謂、”若者論”の範疇に分類されますが、類書の著者の多くが、”かつて若者だった”人だったのに対し、古市氏は26歳と若者のコアというべき年代というのが目新しい。

本書の主題となっている”幸福な若者”とは、”内閣府の「国民生活に関する世論調査」の、2010年の時点で20代男子の65.9%、20代女子の75.2%が現在の生活に「満足」していると答えている。”に基づいています。
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本書は、この満足度を過去に遡って分析し、”その時代の若者は、景気が良いほど満足度が低く、景気が悪い時には満足が高くなる”ということを統計から導いています。

”将来の方が確実によくなると皆が思える時代には、明るい将来に比べ現在は不満となり、将来に希望が持てない時には日常生活や絆といった身近な所に満足を求める”という分析は旧来では出てこない切り口です。

これに限らず、”若者は留学しなくなった”、”車に興味がなくなった”という世評について、その都度、公的統計を参照し、事実かどうか確認したうえで持論を展開していることに好感が持てます。

この1冊で、現代の若者から戦中から戦前のかつての若者のその時々の位置づけ、ライフスタイルまで網羅できることが最大の特長。著者が若者に属しているのに妙に醒めている感があるのを除けば、5つ星クラスの内容といえそうです。

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